社会人としていろいろな本を読まなければ
こういう考えを持つ人というのが結構最近は増えています。日本の社会人の読書量が少ないという調査なども有名になり、そういうデータを見て我に帰る人や行動を変えなければと思う人が多いのでしょう。
さて、そんな時にどういう本を読んだらいいんだろうかということで本の選び方とかが気になる人が多いと思われます。
そういう人向けに本の選び方特集というのがyoutube上やWEB記事しかり色々なところで見かけるかもしれません。
これをとりあえず読めばいいというものには軽薄なビジネス書を進めるものもあれば、読み手の睡眠欲を掻き立てる哲学書を並べ立てる人もいます。
そこで本日は当サイトが推奨するおすすめの本を紹介しつつ、それに先立って、おすすめとした定義をはっきりさせておこうと思います。
私がおすすめの基準として今回置いたのは「次にどんどん別の本を読んでみたくなる」という観点で選んでいます。
忙しい社会人が本屋で大きく時間をかけながらではなく、本屋にいく段階では買いたい本が決まっているというような本を選定しました。
マルクスを読んでみようかな、ニーチェを読んでみようかな、そういった知的好奇心をくすぐる本を今回は選定しています。
ここであげる著書は膨大な名著と言われるものを優れた頭脳で読んだ著者が読者に対してこれは世の中でこう読まれているが、実際はこうではないかということを展開するようなものになっています。
もちろん著者自体の批判的考察、批評を鵜呑みにする必要はありません。
ただ一つの切り口を与えてくれるというのは、難解で手をつけられない、つけたくないと思う著書に触れるきっかけをくれるのです。
目次
社会人に本の選び方を提供する本① 『人間の条件』
まずは人間の条件という書籍をあげたいと思います。
これは私自身が古典をたくさん読むきっかけになった本でして、まさに本の選び方を提供してくれる本です。
私はこれ以降マルクスやニーチェ、ハイデガー、ヘーゲル、デカルト、プラトン、アリストテレスといった本を読むようになったのですが、本書は名だたる人物の考えとそれに対する彼女の洞察が提起されているようなものになっています。
またこの本の大きいテーマ自体はタイトルにある通り人間の条件を探るものでありそこも興味を抱きやすいものとなっています。
ちなみに彼女の人間の条件を問う切り口は人間の行う行為から分析しようとするものです。
具体的には彼女はその行為を労働、仕事、活動という3分類からみていくわけですが、それぞれについての分析の中でマルクスやニーチェなど名だたる哲学者が登場しては批判に晒されるのです。
もちろん彼女のこの書籍も後年批判に晒されるところがあるのだが、色褪せない箇所は非常に多く、彼女の天才ぶりと思想哲学の面白さに気づかせてくれるいい本です。
社会人にとって働くとは何かや自分の人生において足りないものは何かの根本を開示してくれるという意味で話題も身近でありとっかかりとしてお勧めです。
社会人に本の選び方を提供する本②『世界史の構造』
続いては、過去に何度か紹介している柄谷行人の著名な一冊です。
こちらは世界史をこれまでにない見方から捉えることでこれまで説明がつかなかったものに対してある一定の筋の通った説明ができるのではないかということを提起する本です。
この著書でもマルクスを筆頭にヘーゲル、マルセスモース、ウォーラーステイン、ウェーバー、ネグリ・ハート、カントなどが登場し、それぞれの主張と批判されるべきポイントを提示してくれるためこれらの著書をまさに読んで見たいと感じさせてくれます。
ざっくりとしたあらすじは我々の多くが世界史を生産様式、つまり生産手段を誰が持つのかという観点で見てしまうのに対して、柄谷は交換様式というどういった交換のあり方が一般的かを見ることで、マルクスが説明できなかった近代以前と近代以降の断絶をつなぐことが可能だとしています。
社会人に本の選び方を提供する本③『リオリエント〜アジア時代のグローバルエコノミー〜』
3冊目はアンドレ・グンダーフランクの『リオリエント〜アジア時代のグローバルエコノミー〜』です。
こちらは、先の柄谷の議論とも関わる部分がありますが、世界史の捉え方において多くの天才と言われてきたマルクス、スミス、ウェーバー、ウォーラーステイン、ブローデル、などが全て無意識に西洋以外の世界を切り落とした分析を歴史の全てと捉えていたことを痛烈に批判するものです。
批判内容はサイードが『オリエンタリズム』という著書で描いたようなアジア蔑視思想が根本にはあるのではないかということが提起されています。
この著者の優れているところは先に挙げた天才中の天才がはまり込んだ落とし穴をクリティカルに見抜いている点で、権威を持った人間の話を批判的に捉える重要性はもちろんそれをするための訓練ができる本です。
ちなみに本書ではヨーロッパが世界の中心などではなく、元々はモンゴル帝国含めアジアが世界史の中心を近代以前には担っていたことを述べた上で、なぜその覇権交代が起きたのかを教えてくれている。
そういう意味では、社会人がアメリカ式の経営モデルやアメリカナイズされるコンサルへの憧れなどを抱いていくことは時代に逆行する可能性があるということを提示してくれますから、今後本の選び方として東洋に関わる思想ややり方を学んでいくということは重要ではないかと思っています。
ファーウェイやアリババなどのハイテクに関わる技術力はアマゾンやgoogle、アップルなどと既に並んでいるか超えてすらあるように私には見えます。
社会人に本の選び方を提供する本④『資本主義はどう終わるのか』
『資本主義はどうd終わるのか。』
こちらも過去に何度か紹介したことがありますが、ヴォルフガングシュトレークの著書です。
タイトルにある通り資本主義の破綻状態を学問横断的に分析し、それ以降の世界についての洞察を与えるものである。日本での知名度はイマイチですが、ヨーロッパではトマピケティと双璧をなす社会学系の学者の一人で、実際著書を読むとピケティ同様スケールが大きい方です。
ここでいうスケールというのは空間的なものと時間的なもの両方を含みます。
シュトレークも天才と言われる人物たちをこれでもかとぶった切っていくスタイルで、マルクスはもちろんウェーバー、シュンペーター、ポランニーなどをたたき台に話は展開されます。
個人的には今回紹介する著書で一番新しくリーマンショックなど馴染みの深い時事ネタもあるため、取っ掛かりとしてはおすすめ度は高いものとなっています。
社会人に本の選び方を提供する本⑤『なぜ世界は存在しないのか?』
最後がマルクスガブリエルの本です。
彼は今をときめくということもあり名前を知っている人も多いでしょう。
彼の結論が世間で騒がれているほどすごいのかはともかくとして、批判的洞察は特筆するべきものがあると私は思います。
ここまでの4冊よりもガチの哲学書という感じなので、取り扱う人もカント、ルソー、スピノザ、ライプニッツ、ニーチェなどいわゆる抽象度合いの非常い高い人物たちをあげながら問題点を指摘していくというスタイルをとっています。
著書の内容自体は世界が存在しない理由というところを足がかりに人間とは何かや自分とは何なのかについて比較的哲学書を普段読まない人でも理解できるように平易に書いてくれています。
もちろんアンチが少々多いので嫌がる人もいるかもしれないが、過去の偉人に対する批判的考察は群を抜いて秀でています。
最後に
最後に振り返っておきたいと思います。今日は社会人が読んでおきたい本に出会うための具体的な方法を紹介しました。具体的には名著を整理し、批判的考察を通して興味深い議論を通しているものを読むことでそれは可能であるということですが、アーレント、柄谷行人、フランク、シュトレーク、ガブリエルが実際に該当すると述べました。
なのであえて、ニーチェやカントやといった哲学ど真ん中はあえてあげていませんし、もちろん軽薄なこれをやれば成功というビジネス書も選んでいません。
正直カントの純粋理性批判をいきなり読むというのは前提がないとかなりしんどいわけです。
マルクスについてもそう。
彼らの前の偉人であるデカルトやアダムスミスを読まないとしんどいのです。
しかしそれを言い始めるとプラトンやアリストテレスから読もうということになるわけだが、プラトンやアリストテレスを一番最初から読んで面白いかというと正直微妙だったりするわけです。
そういう意味で20世紀以降で比較的使用言語が接近している人の中から過去の偉大な書物を読み込みそれを批評した人を足がかりにして入っていくのは悪いことではないのです。